8月7日・8日に関西大学で「第3回 批判的言語教育国際シンポジウム 未来を創ることばの教育をめざして 内容重視の批判的言語教育(Critical Content-Based Instruction: CCBI)の10年」というシンポジウムが開催されます。
批判的言語教育をながらく研究してきた私として,非常に貴重な機会であり,以前より強い問題意識のあった「言語教育の研究慣行における西洋中心主義・(セルフ)コロニアリズム」というテーマでパネルを企画しました。登壇を快諾していただいたパネリストのみなさんに感謝します。また,オーディエンスと議論する時間もふんだんに用意する予定ですので,問題意識をお持ちのかたはぜひ共有をお願いします。
タイトル
学術的コロニアリズムに迎合/抵抗する言語教育研究
登壇者
- 寺沢拓敬 (関西学院大学)※企画代表者
- 梶ヶ谷毅 (国際基督教大学・ブリティッシュコロンビア大学)
- かどやひでのり(津山工業高等専門学校)
- 神吉宇一 (武蔵野大学)
- 山下里香 (関東学院大学)
- 亘理陽一 (中京大学)
企画概要
本パネルでは,批判的言語教育の研究動向を「学術的コロニアリズム(academic colonialism)」という観点から捉え直す。
日本の批判的言語教育における批判的諸概念の使われ方には,相反する特徴が観察できるように思われる。一方で,既存の言語教育の無批判性・反動性を暴き出す解放的性格であり,他方で,英語圏の批判的応用言語学のトレンドを,日本の歴史的文脈を考慮せずに「直輸入」する,学術的コロニアリズムへの迎合およびローカル性の軽視である。
この状況を深刻に受け止め,(1) 既存の批判的言語教育研究における様々な言説を学術的コロニアリズムの視点から問題化し,(2) それらの課題を乗り越え,いかに真の(学術的)コロニアリズム批判へとつなげられるか検討する。
より詳しい趣旨説明
以下,本企画の背景を含めて,もう少し説明を加える。
現在,日本の批判的言語教育で重視されている諸概念の多くは,英語圏の応用言語学を経由している。
例えば,ネイティブスピーカリズム,西洋中心主義,オリエンタリズム,ポストコロニアリズム/デコロニアリティ,英語帝国主義,ローカルの知,トランスランゲージング, 継承語など。
もちろん,これらは必ずしも英語圏由来でも応用言語学由来でもなく,多くは英語圏などの周縁部で生まれ,「中心」に対する異議申し立てとして練り上げられてきた。これらはその後,英語圏の批判的応用言語学者によって積極的に受容され,自己相対化のための重要な枠組みとして発展してきた。
しかし,これらの批判的諸概念が英語圏の応用言語学を経由して日本へ輸入されることで,複雑な事態が引き起こされている。
もちろん,こうした概念輸入には反省・解放を促進するというポジティブな面がある。つまり,日本の言語政策・教育実践に潜む(内面化された)西洋中心主義やコロニアリズム,ネイティブスピーカリズムを批判する拠り所となるし,実際,先行研究のほとんどはそのような理念で行われてきた。しかし,同時に,以下のような学術的コロニアリズム(academic colonialism)を呼び込むというネガティブな面があるのではないかというのが本企画の趣旨である。
本パネルでは,批判的言語教育の研究動向を学術的コロニアリズム(Murphy & Zhu, 2012)という観点から問題化する。つまり,批判的言語教育には,その根底にはコロニアリズムへの批判意識があるにもかかわらず,学術的コロニアリズムに迎合してしまう面があるのではないかという問題提起である。それを踏まえ,こうした問題点を乗り越え,(学術的)コロニアリズムに真に抵抗する言語教育研究がいかに構想できるか検討する。
- Murphy, J., & Zhu, J. (2012). Neo-colonialism in the academy? Anglo-American domination in management journals. Organization, 19(6), 915-927. https://doi.org/10.1177/1350508412453097